老母はコロナ中にホームへ入居したため、用がない限り会えない状態がずっと続いています。用、というのは、入居したことで準備すべき棚・TV・季節ごとの服などの持ち込みと、ホームに往診されてる病院の先生への挨拶・相談。
入居したホームは本来、結構自由なところで、事前に連絡しておけば、本人を連れて外出外食したり、本人の部屋に入って持ち込みのご飯やお菓子を一緒に食べたりできるところです。リクレーションも毎日あるところです。
だけれども、老母の場合、入居以来数か月、私か弟が用事のあるときだけ、玄関・受付ホールの二重ドアごしに顔姿を見ながら、遠い耳で携帯電話でしゃべるというのを、数回だけ。
先日、冬用の衣類を持って行ったとき、母が二重のドア越しにケータイで、
「もう私は一生ここから出られへんのやな。姥捨て山に閉じ込められてる気がする。あの子(弟)が何回も病院から逃げ出した気持ちがわかるわ。」
なんて言い出しました。
そやけど、
姥捨て山には、暖かい食事や部屋も、週2回とはいえお風呂もないやろ? ここは洗濯や掃除もしてくれはるし、医者や、お菓子など買物できる薬局や、美容師も来てくれはる。お金の計算はせんでもええし、薬もちゃんと飲ましてくれはる。困ったとき用のコールもある。何かあったら家族にすぐ連絡してくれはる。そーんな姥捨て山、ないで。
家に帰ったらまた、一日中テレビやろ? なんかあるごとにあちこち電話するやろ? いや、もうテレビのつけ方も電話のかけ方もこんがらがってるかもわからんで。家の中で何回もこけたり、不安になるたびに緊急ボタンを押すやろ?トイレを失敗しても、ヘルパーさん来るまでそのままやろ? 御飯も薬ももうめちゃくちゃになってると思うで。台風やら地震やらでそっちにも私のとこにも避難指示が出たら、どうにもできひん。
けど私はいっしょには住めへん、
という自分勝手な言葉は都合よく、けれど重く飲みこんで、
そんなふうなことを二重ガラスドアの向こうにいる老母に言うと、なんだか混乱したようでした。言葉が多すぎました。
今回、コロナ第3波で「リモート面会にします」との文書が来ました。
ひと家族につき月2回。1回につき約10分。要予約。
ダウンロードのURL?など書いてありましたが、私には、できそうにありません。職員が老母の横についてくださるとはいえ、老母も「娘がパソコンのテレビに出てる」とまた混乱しそうな気配が。。。なにせ以前からパソコンを毛嫌いしてる老母です。
で、久しぶりに母に電話することにしました。今までは、私との会話内容で、老母が余計に不安になったり悲しくなったり怒ったりパニックになったりするかもと控えていたのです。まぁ不安になってもその後に食事があれば(美味しいのだそう)気持ちがやわらぐかなと、食事前に。
10回コール。出ません。トイレかもしれない。ちょっとしてからまた、今度は20回コール。んん~~、ケータイをカバンに入れてたりテレビの大音量で気づいてないか、気づいたけれどもケータイの扱い方がもうわからなくなってるか、電話に出たくないか。ま、いいかと、TEL終了。
別の日に、もいちどTELするも、同じ結果に。
もうTELもせんとこうかなぁ、と思ってたある日。老母からTEL。
「ここ(ホーム)の人に、電話かかってきてるみたいやで、って教えてもろてん。ほんで、あんたとこに電話かけてもろてん。」
着信に気づかなくて、さらにケータイを使えなくなっていたのでした。
電話があったのを見つけたら、私(風)が元気にしてるんやと思っといてくれたらええで。
と言うと、ちょっとの間あけて
「ん?なんのこと言うてるのか、わからへん。」
でした。今朝なに食べた?とか、最近コロナでタイヘンやとか、足のケガ治ったか?とか話し、電話してくれてありがとうと老母に伝え、終了。なんだか、老母の声を聞けて、ほっ。老母に声かけてくださった職員の方に感謝です。 でもこの電話会話の後、老母がまた家のことを思い出し帰りたくなり、職員の方を困らせてなければいいのですが。。。
私は、老母の言動にふり回されて疲れたり心配したりすることが減って、血圧など心身ラクになり、時間も自分のために使えるようになりました。けれど、老母の心は、、、、という後ろめたさは持たねばなと、常に自分に言い聞かせています。
最近のコメント