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「心中天の網島」

Photo むかし、大阪に、紙屋治兵衛(かみやじへえ)っていう老舗の主人がいはったんやて。 28歳。2児のパパ。 この男、小春という名の遊女と恋仲にならはりましてん。 小春は19歳!

不倫ですわなぁ。 3年、つき合うたはったんやて。 ふたりで心中しよな、って約束したはったらしい。

でな、治兵衛の女房がおさんって言いますねん。 おさんは、小春に手紙を書かはりました。 それが・・・・「亭主と別れて下さい」という手紙とちゃいますえ。 これは、私、ちょっとぐっときましてん。「心中したら、うちの亭主は死んでしまう。 うちの亭主を死なさんといて下さい」いう手紙でしてん。 な、ちょっとぐっときますやろ? 相手をけなすよりももっと大事なことは、好きな亭主の命を守ってくれと頼むこと。 そう書けるというのは、幸せなことや。

そんでや。 小春は芝居した。 ほんまは死にとうはない、と。 本心は違うんです。 他の男に身請けされるぐらいなら死んだほうがまし、って思ったはりますねん。 かなり本気で。

小春は俺と心中する気はないらしい。と、知った治兵衛は、商売まったくやる気なし。 コタツでごろごろ。 ってか、コタツにもぐってなみだなみだ。 どーやねん。 会いたかったら小春に会いに行く! 家庭が大事なら、仕事しなはれ!

一方で、死ぬ気の小春のことを知った女房のおさん。 他の男に身請けされへんように、自分と我が子の着物を売って小春の身請け金を作ろうとするんです。 も~、なんでそんなことまでするんやろう・・・・というところで、実家の親が見るに見かねて 離婚させるんです。

治兵衛はどうしたか。

小春と心中です。

最期に小春。 「今度の今度の今度のずっと先は夫婦に・・・」と言いかわすいっぽうで、 「ふたり同じ場所で死んだら、奥さん(おさん)に悪いから」と、「私を殺したら、離れたところで死んで下さい」と、治兵衛に頼むんです。

なんともはや・・・・・。 これも悲しいやおまへんか。

Photo_4もう何十年ぶりかで人形浄瑠璃を観たんやけど、若い時よりもちょっとばかし話の内容がわかった気ィするわ。 私が成長したのか、語りの言葉を字幕で出してくれはったからか、語りの言葉自体がより現代に近い言葉に変わってるのか・・・。 最後の場面‘道行名残のはしづくし’は、舞台セットも語りも豪快で素敵でした。 とっても奥深い舞台のよう。 語り舞台がくるんとまわって交代しはるのも、めずらしかった(私にとっては)。

11時開演。2時50分終演。  大阪は国立文楽劇場にて。

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